このテナントを借りた時にすでに花壇に植わっていたサンザシの木
風にあおられ歩道に向かって伸びていて、倒れないように柱にビニールひもでくくられていた
歩行者の邪魔になるのとエアコン設置の邪魔になったので思い切って切り戻した
ここまではオープン前までの事
オープンして数日が過ぎたころ、一人のご婦人が訪ねて来て
「あなた、なんでこの木切ったの?私が大事にしてたのに、たまにこの木の枝をもらって近くのケアホームに届けてたのよ、みんな楽しみにしてたんだから!。。。。(永遠と続く)」
どうやら、このご婦人は前のおせんべいやさんの頃から、この木をえらく気に入っていたようで僕が勝手に切った事に腹を立てたらしいのだ
僕としては事の経緯も話し、今後の管理予定も説明しお詫びした
これで済んだかに思えたが
数日後。。。
僕の顔を見るなり同じ話しをしてくださる。。。
来る日も来る日も声をかけてくる、
ご友人を連れて、花壇の前を通るたびにご友人にも説明している
よほど、このご婦人にとっては大切な思い入れがあったのだろうと思う
何度目のときだろうか、僕は考えていた一つの提案をすることにした
「もしよろしければ、お譲りいたします」
ご婦人はこの提案をとても喜んでくれた
できれば休眠期が良いのではということも話した、大体の日程も決まった
このサンザシの木をもう一度、綺麗に仕立て直すのも僕の楽しみでもあったのだが、もう、決まったことだ
その植物によって環境の向き不向きがある、この店の場所は風が強く、ほおって置いては木が横に流れるように伸びてしまう
また、仕立直そうとしたところでも、傾きながら伸びてしまうかもしれない
ここではない、風が穏やかに吹く庭で真っすぐに咲ける環境はこの木とってとても良いことだろう
新芽も出始めた、約束の日はもう間もなくやってくる
枯らしてしまっては、僕は二度もこのご婦人を傷つける事になってしまう
その日まで絶対に枯らせられない木がそこにはある